ヒックとドラゴン

周囲で大ヒット中の『ヒックとドラゴン』。お奨めされて3Dで観に行きました。
これはまさに3Dで観るための映画!

映像と立体音響が相まって、風を切る感触まで肌に感じたような気がしました。
こういうアトラクションがテーマパークにあったら、何度も並んじゃうなあ。大型筐体化されて、ドラゴンの背中に乗って遊べたら楽しいだろうなあ。


(※以下ネタバレです。)


……と、満足感が先行してすっかり忘れていたのですが、そういえば各所で話題になっている、最後のナレーション
「僕の住む国にはドラゴンのペットがいる」
には、私も「えっ?!ペットなの?」と思ったのでした。
その直前、ドラゴン達がすっかり村人の「乗り物」になっている画が出た時点で「あれっ?」と思い、「ペット」で止めを刺され……。まあでも、原作ものだそうだから、そもそも「ドラゴンをペットにしているバイキング村」っていうシリーズコンセプトがあって、物語の導入としてそこに着地した結果なのかなあ。「犬でも猫でもなく、ドラゴンがペット!(しかもバイキング!)」って、読者(子ども達)にはその設定は魅力的だろうなあ、なんて思って映画館を後にした。


これもツイッターで教えてもらったのだけど、原語では、冒頭ナレーションの「害獣(pest)」とペットが掛けてあるのだそう。なるほど。上の動画でも確かにそう言ってる。
日本語の「ペット」と欧米での「pet」はだいぶイメージが違い、もっと家族や相棒に近い感覚という解説も。モンゴルの遊牧民にとっての馬もpetなのかなあと思ったりしたが、広い意味で言えば、petと呼ぶ人は呼ぶという話なのかもしれない。


それよりも、私が映画のラストに「あれっ?そーなんだ」と思ったのは、要するにこの話全体が
「怪我によって野性の世界から落伍したドラゴンが、例外的に人間と共生する事になる」
のではなく、
「ドラゴンという種全体が家畜化されるまでの物語」
でした、というオチだったからだ。個人的には、「良かったね」とはちょっと思いにくい。
とはいえ、仮に戦い終えたドラゴン達が、最後は自由な野生に還って行ったとしても、結局食料はバイキング村に獲りに来るとしたら害獣のままだし…………(想像中)…………個人的にはその方が「良かったね」と思ったかも(笑)。でもその流れだと、ヒックに弱点を知り尽くされたドラゴン達は、遅かれ早かれ家畜化されるのが自然の摂理なのかも。そうか結局、力関係で行くとなるべくしてのラストだったんだなあ。深いなあ。


というか、この物語世界にはそもそも「野生」が無い。あくまで都市生活者である現代っ子達が、束の間バイキング村での生活(ドラゴンつき)を楽しむアトラクション的な作品だし、出てくるキャラクターも現代人そのままで、ゲームをするようにドラゴンを倒すし、犬猫を飼うようにドラゴンを飼う事になる。そういうリアリティの軽い世界で、野生動物を家畜にする事への忌避感なんかを期待するのは、お門違いなのかも。
逆にそういうものを描いた、同じドリームワークスの眉毛馬、『スピリット』を思い出したりしました。

スピリット スタリオン・オブ・ザ・シマロン [DVD]

スピリット スタリオン・オブ・ザ・シマロン [DVD]

『スピリット』では、野生馬を捕らえて調教しようとする西洋人が「悪」、インディアンが「善」として描かれていたけれど、西洋人視点からの「共生」の善(「家畜でペットかもしれないが、仲良くやれればいいじゃないか」という)をさらっと描いたのが『ヒックとドラゴン』なのかもしれないなあ。
考えすぎでしょうか。
何はともあれ、トゥースに乗って空を飛ぶ感覚は素晴らしかった。直前に『インセプション』を観た後だったので(笑)、父子の関係のあったかさも響きました。


原作はだいぶ設定が違うようなので、そちらも読んでみたいな。

ヒックとドラゴン〈1〉伝説の怪物 (How to Train Your Dragon (Japanese))

ヒックとドラゴン〈1〉伝説の怪物 (How to Train Your Dragon (Japanese))

だいぶ違いますが、流れでシートンを思い出したのでこちらも!
シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)